
未知の国、ジョージアへの第一歩
私が知っているヨーロッパではない、旧ソ連であり、中央アジアの先に位置する国。想像もつかない未知の国、ジョージア。ずっと訪れてみたいと思っていた場所に、ついに足を踏み入れる時が来た。
中央アジア・カザフスタンからジョージアのトビリシへ入国したとき、少しだけホッとしたのを覚えている。街にはコンビニがあり、ロシア風の雰囲気から、どこか欧米に近い華やかな空気へと変わったからだ。 面白いのは、ジョージアは「ヨーロッパ」でありながら「旧ソ連」の顔も持っていること。街中で通じるのは英語ではなくロシア語で、その点はカザフスタンと同じだった。

活気ある中心地と、素朴なローカルの暮らし
トビリシの中心地は活気に溢れている。ヨーロッパ風のおしゃれな街並みに美術館や博物館が立ち並び、通りにはカフェの椅子が並ぶ。 一方、地下鉄やバスでローカルなエリアへ足を伸ばすと、そこには飾らないジョージアの人々の暮らしがあった。古い建物、行き交う人々。バスの窓から流れる景色は、一瞬たりとも目が離せなかった。 治安も良く、人々は素朴で優しい。
滞在して数日、ジョージアには多くのロシア人が滞在していることに気づいた。隣国ゆえに旅行者が多いのは当然だが、今の世界情勢を考えると、その光景はどこか複雑に映る。 私が泊まった宿には、ウクライナから長期滞在している方もいた。多くの国がロシアへの直行便を停止しているなか、ジョージアは今もロシアからの便がある数少ない国の一つなのだ。そんな背景が、この街の空気をよりいっそう不思議なものにしていた。

黒海のリゾート、バトゥミへの鉄道旅
次に向かったのは、海好きの私が楽しみにしていたリゾート地、バトゥミだ。 バトゥミへ向かう列車の中は、まるで伊豆へ向かう「特急踊り子号」に乗っているようなワクワク感があった。約5時間の電車の旅は、多くの旅行客で賑わう人気路線だ。 バトゥミの街を一言で表すなら、「熱海をさらにグローバルにして、投資したくなるような活気を加えた場所」。ここもまた、多くのロシア人で賑わっていた。海辺には広々とした公園や遊歩道が整備され、ゆったりとした時間が流れている。レストランやショップも充実していて、リゾートとしての魅力と快適さが詰まった街だった。 (ちなみに海は白砂ではなく石の浜辺で、透明度はそこまで高くはないけれど、それでも十分に心地よい場所だ)
鉄道での出会い、ジョージア人の青年ギョールギ
このジョージア鉄道の旅では、嬉しい出会いがあった。隣の席に座っていたジョージア人の青年、ギョールギだ。 バトゥミに到着するまでの間、ジョージアと日本についてたくさん語り合った。片言の英語と、時々助けてくれるChatGPTを頼りに。ジョージア人の考え方や、彼らが抱く思いに深く触れることができた、素晴らしい時間だった。

タイ料理店で出会ったアニータとの対話
翌日の夜、タイ料理店で相席になったロシア人のアニータとも友達になった。サンクトペテルブルクから旅行に来ていた彼女は、高校生の息子の写真を見せてくれた。 彼女はふと、控えめにこう聞いてきた。「日本人は、ロシアのことをどう思っているの?」 多くのロシア人が訪れるジョージアだが、彼女はどこか控えめな感じがした。話は盛り上がり、食後は二人で夜の海辺を散歩した。彼女の英語は、とても流暢で美しかった。

72歳のアンナさんと歩いた、バトゥミの街
バトゥミ最後の日には、同じ宿にいた72歳のロシア人、アンナさんと街を歩いた。 看護師として50年働き、今は年金生活を送りながら年に一度の海外旅行を楽しんでいるという。彼女は驚くほど明るく社交的で、一日中歩き回っても「疲れた」とは一言も言わない。先に根を上げたのは私の方だった。 芯が強く、弱音を吐かないその姿は、とても72歳とは思えない気力に満ちていた。ロシア語しか話せないアンナさんと、英語が少ししか話せない私。アジア人が珍しいローカルなエリアを歩く二人の姿は、周囲の目にどう映っただろうか。 言葉は完璧に通じなくても、朝から夕方まで一緒に過ごした私たちの心は、確かに繋がっていた。別れ際、彼女はロシアのチョコレートを私に持たせてくれた。
「日本人」という立場がくれた、不思議でうれしい体験
私は日本人だ。今のロシアを取り巻く情勢に直接的な当事者ではなく、彼らに対して先入観も持っていない。 抵抗なく、ごく普通に接する私に対して、彼女たちは少し驚き、そして喜んでくれたのかもしれない。だからこそ、あんなに温かい時間を共有できたのではないだろうか。 本当に、不思議でうれしい体験だった。

旅が私の人生に彩りを加えてくれる
ジョージアの景色やビーチ、美味しい食事ももちろん素晴らしかった。けれど、心に深く残っているのは、出会った人たちと交わした温かな時間だ。 毎日美味しい朝食を作ってくれた宿のスタッフ、鉄道で出会ったギョールギと、私を宿まで送ってくれた彼の友人のニコ。タイ料理店で出会ったアニータ、一日中一緒に歩いたアンナさん。 さらに、飛行機で一緒だったキュートな中国人の若いご夫婦や、韓国の宿で6時間もお茶をしたドイツ人のおばちゃん……。
今までの人生で出会ったことのない人たちと、次から次へと出会う旅だった。 旅は、私の人生に新しい彩りを加えてくれる。 無事に旅を終えられたこと、驚きと喜びをくれたすべての人に、ありがとう! そして、いつも温かく見守ってくれる家族にも、最大の感謝を!